武蔵野市公立保育園涼環境創出プラン
〜「涼」といいながら全然涼しくない!コレって変だよ!〜

南保育園父母の会有志

はじめに

室温37度を記録した2004年の猛暑の前では、涼環境はまさに焼け石に水!
現実を無視したこの施策について多くの人に知ってほしいと思います。


 武蔵野市が2003年から実施しているクーラーを使わずに夏の暑さを和らげる「涼環境を創出する取り組み」について、モデル事業の対象となっている市立南保育園の父母会は8月上旬、全86世帯を対象にアンケート調査を実施しました。74世帯(86・0%)が回答した調査結果では、モデル事業について効果が「ある」「少しはある」と感じる世帯と、「あまりない」「ない」がほぼ同数で評価は分かれたものの、子供たちが保育中や帰宅後、室温が原因と思われる体調不良を訴えたことが「ある」と答える世帯が全体の30・1%と3割に達しており、全体の83・3%の世帯が2階の保育室にクーラーの設置が「必要」と考えていました。

【平均気温33℃超す】
 アンケートとは別に、保育士が室内に設置した温度計で計測した記録では、クーラーのない2階の保育室の平均気温は、7月に4歳児の午後が33・6℃、5歳児クラスは午前が33・1℃、午後が33・2℃と33℃を超えています。
 市は「外気温に比べて室内の温度を下げることに効果があった」として「涼環境を創出する取り組み」を継続、クーラーを設置する方針はありません。しかし、今夏のように連日35℃に迫る酷暑の中、たとえ外気温に比べて1−2℃下げても、2階の保育室は30℃を大きく超えており、とても子供を保育できる環境にあるとは考えられません。

【“緊急避難”が月の半分以上】
 保育園は夏休みがありません。現在、保育室の温度が上昇し、特に光化学スモッグが出た日は窓を開けられないため、“緊急避難”として3〜5歳児はクーラーのあるホールに集められています。7月は全平日(21日)の、半分を超える13日は“緊急避難”しています。“緊急避難”が常態化しているのです。ホールに全員集めると、一人当たり面積は保育基準を大きく下回り、とても安全に保育ができる環境ではありません。
 「涼環境を創出する取り組み」が昨今の異常気象に対応できていないことの表れとも言えます。こうした“緊急避難”は、市が昨今の異常気象に対してクーラーの必要性を認めている裏返しでもあります。
それならばクーラー設置費用を大きく上回っている「涼環境創出」だけに固執せず、2階の各保育室にクーラーを設置、「緊急避難」として使えば、よりよい環境で安全に保育できると思います。クーラーを全面否定するのではなく、適温で使う努力をするべきではないでしょうか。

【父母会の要望】
 父母会は子供たちの安全と、よりよい保育環境のために、南保育園の2階(3歳児以上)の各保育室にクーラーを早期設置することを強く求めます。

【TOPICS】
2004.11.14 毎日新聞首都圏版に涼環境問題の記事が掲載されました。

涼環境創出プランって何?

【背景】
 長年にわたり公立保育園の父母会では冷房設置を要望し、2001年まで0、1、2才児までの保育室には冷房が設置されました。ところが、2003年度になると、武蔵野市は冷房設置への考えを改め、子どもの健全な発達のためには汗をかく環境も必要と、冷房に頼らない涼環境の考えを保育園の父母に提案。2002年10月、「涼環境を創出するための電子フォーラム」を
市のホームページ上に立ち上げ、父母や保育士からの幅広い議論を得た上で、この課題に関して「公立保育園に「涼」環境を創出するモデル改修プラン検討委員会」を設置し、子どもの発育や建築分野などの専門家を委員として、子どもの発達の面とハード的な側面の両面から検討を行いました。
 結論としてハード的な部分としては冷房に頼らず室温を下げる試みである屋上散水、オーンニング、天井裏換気などの工事を実施。また、ソフトの部分では、乾球温度34℃、湿球温度28℃とする「警戒ゾーン」を仮説的に設け、その状態をいずれかでも上回る場合に、保育士など専門職による対応方法もマニュアルとしてまとめました。これらハードとソフト両面からなる涼環境創出の事業を、武蔵野市立南保育園もモデル園として2003年からスタートさせています。

【内容】
 委員会の報告を受け、モデル園である南保育園では、2003年度6月に以下の4つの改修工事を実施。園庭南側に井戸を掘り、その水を屋上に上げて散水をする「屋根散水」、東、南、西面への「日除け」設置、夜間の涼しい空気を室内に取り入れるための「夜間換気」、汲み上げた井戸を分岐して「手回し井戸」の設置。
 また、この改修内容の効果をみるためにモニタリングも実施。今までの室温だけでなく、湿度、湿球温度、風向、外気温などを測定し、体感温度の指標であるPMV(WBGT)の測定も行った。加えて、子どもの体温調節の発達をみるために体温変化を測定。1歳と5歳の保護者の協力を得て、体温のモニタリング(4週間の期間中1日5回の体温測定)を実施しました。また、2004年度からはその他の園(東保育園、境南保育園、千川保育園)でも比較的効果の高いものを選んで改修工事を実施されました。

【2003年度の結果】
 2003年度は、冷夏になり、7月に、外気温と室温の差2.7度、同じく8月に0.4度低下となったのですが、このような低調な結果に終わったのにもかかわらず、信じられないことに武蔵野市は「成果あり」と発表しました。(工事費(税金)3,000万円ほどかけてですよ!)

H.16武蔵野市予算の概要(特徴ある事業)より

夜間換気 オーニング(日よけ) 手回しポンプ 屋根散水
午前0時から6時間稼動させて、深夜の涼しい空気を室内に取り込むというものだが、わずか1℃しか温度抑制効果がなかったという。
若干の温度削減効果があったいうが、商店街にはあるようなものなので、そんなに威張れるものではないのでは。 子供達だけでは危ないからと、先生がいる時以外はほとんど使われていない。日常的にはシートがかけられている、無用の長物。
屋根表面はマイナス10 ℃の効果が認められたが、室内への影響は不明。他園への設置をやめたところをみると、コスト対効果は少ないと市も判断したのでは。

【関連サイト】
東京新聞記事
サンデー毎日記事

涼環境の効果を検証

2004年度夏の温度測定結果
南保育園父母アンケート
千川保育園父母アンケート

緊急避難の現状についておよび他自治体での冷房設置状況

緊急回避および他自治体での冷房設置状況について

武蔵野市立保育園の冷房設置の経緯

1987年頃(昭和57年頃) ホールに冷房設置
1990年(平成2年) 0才児保育室冷房設置
1991年(平成3年) 1才児保育室冷房設置
2000年(平成12年) 武蔵野市立千川小学校にて、『市長と子育てを語る会』開催。冷房設置問題も議題に上る。
2001年(平成13年) 2才児保育室冷房設置
2002年(平成14年) 10月 武蔵野市役所ホームページ上で、「公立保育園へ涼を創出するためのフォーラム」開催(投稿数129件、閲覧数2万近く)
2002年(平成14年)11月〜2003年(平成15年) 3月フォーラムを受けて、「公立保育園に「涼」環境を創出するモデル改修プラン検討委員会」開催
2003年6月 南保育園で「涼環境創出のためのモデル事業」
第一期工事がスタート(屋上散水、井戸設置、網戸、オーニング(庇)、夜間強制換気用の換気扇設置など
2004年2月 武蔵野市、わずか2003年7月に2.8度の温度削減効果で涼環境創出の取り組みを成果ありと発表!
2004年1月 南保育園で第二期工事実施(階段の強制換気、1階に網戸付きドアに変更など)。
2004年春頃 東保育園、境南保育園、千川保育園でも涼環境への改修工事スタート(網戸、オーニング(庇)、夜間強制換気用の換気扇設置)。

父母会の要望

 自然の中で、涼を感じながら、子どもたちが過ごせる保育環境である、涼環境を創出する試みは、理想としてはわかります。しかし、子どもたちの中にはアトピー性皮膚炎の症状により汗をかくとかぶれになったり、温度調節がうまくできない子もいるのが事実です。
 そう考えると、周囲に自然が少なく、ヒートアイランド現象により猛暑となる東京・武蔵野市では、この試みは、リスクが大きすぎるのではないないでしょうか?父母会は子供たちの安全と、よりよい保育環境のために、南保育園の2階(3歳児以上)の各保育室にクーラーを早期設置することを強く求めます。